用語集

起業・スタートアップに関するキーワードをご紹介します。

PSF

経営・事業戦略 

PSFとは、Problem Solution Fitの略語で、顧客が抱えている問題(Problem)と企業が提供している解決策(Solution)がフィットしている状態のことです。わかりやすく言い換えると、企業が顧客の課題解決に役立つプロダクトを提供できている状態のことです。ほとんどの顧客は抱えている課題を解決するためプロダクトの購入・利用を検討するため、PSFを目指すことで、顧客に選ばれるプロダクトとなります。 PSFの次に目指す段階をPMFといいます。PMFはProduct Market Fitの略語で、顧客を満足させるプロダクトが適切な市場(Market)に提供できている状態のことです。スタートアップの成功には「顧客を満足させるプロダクト」と「適切な市場の選択」が重要であるため、多くの企業はPMFを目指しプロダクトを検証していきます。

インパクト投資

資金調達・キャッシュフロー 

インパクト投資とは、従来の投資の目的である経済的なリターンの獲得だけでなく、投資を通じた社会的なリターンの獲得、つまり社会課題の解決を目的とした新たな投資のことです。もちろん従来の投資もより良い社会・未来をつくることを目的としていましたが、リスク・リターンの2つの軸で投資が評価され、短期的により多くのリターンを得られる投資に偏っていきました。 一方で世界は、貧困・格差・紛争・高齢化・気候変動など、様々な課題を抱えています。国連によるSDGs(持続可能な開発目標)の策定もあり、投資の世界では従来の投資への反省も踏まえ、社会的な影響(インパクト)を意図的に起こす投資活動が増加しています。 インパクト投資では、企業の非財務情報(事業計画・企業のリスクや機会・コーポレートガバナンス・SDGsへの取り組みなど)を投資判断に組み込みます。そのため企業ではこれら非財務情報を可視化し、積極的に公開する必要があります。

資本性劣後ローン

資金調達・キャッシュフロー 

資本性劣後ローンとは、通常のローンは負債としてみなされるのに対し、自己資本としてみなされるローンのことです。劣後ローンとは、会社が倒産した場合に、回収の優先度が他の債務より劣る、つまり優先度が低いものとして取り扱われるローンのことです。劣後ローンは回収できないリスクが非常に高い資金であるため、資本に近い資金として「資本性」「劣後」という名称がつきました。貸し倒れリスクが高いため、通常の融資よりも金利が高く設定されています。 資本性劣後ローンの特徴は、「期限まで返済が不要で、金利のみの支払い」「業績に連動して金利が変動する」「期限一括返済」などです。 コロナ禍では日本政策金融公庫と商工組合中央金庫(商工中金)によって、一時的に財務状態が悪化した中小企業等に対して資本性劣後ローンによる金融支援が行われました。

チャーンレート

経営・事業戦略 

チャーンレートとは、解約率や客離脱率、退会率のことで、チャーンと略されることもあります。 SaaSビジネスなど月額制のサービスを提供するビジネスであるサブスクリプションビジネスでは特に重要な指標です。サブスクビジネスでは、顧客に長く使ってもらうほど利益が出るため、チャーンレートは売上に直結した指標といえます。 チャーンレートを計測して分析することで、継続利用しているユーザーの割合や、ユーザーを1人獲得するのにかかるコスト(CPA)、ユーザーの離脱が収益に与える影響などを把握することが可能です。 ユーザーが解約する理由は様々ですが、サービスに不満があるなど、自社の対応で事前に解約を防げる場合もあります。チャーンレートを改善するには、解約手続き時にアンケートをとるなど、解約理由を把握することが重要です。

転換社債

資金調達・キャッシュフロー 

転換社債とは、あらかじめ決められた価格で株式に変えられる社債のことです。正式には転換社債型新株予約権付社債といいます。英語のConvertible Bondの頭文字を取り、CBと呼ばれる/書かれることも一般的です。 転換社債は企業の資金調達として発行されます。未上場企業において株式を利用した資金調達を行う際には、企業価値(株価)を算定する必要があります。これをバリュエーションといいますが、スタートアップではまだプロダクトが完成していないなどの理由でバリュエーションが困難となることがあります。転換社債による資金調達で発行するのは社債であるため、バリュエーションを先送りできます。この特徴から、特にシードラウンドにおける資金調達方法として利用されています。

インキュベーション

支援プログラム・団体・機関 

インキュベーションとは、起業や事業創出をサポートするサービス・活動のことです。英単語「incubation」は「卵の孵化」を意味しますが、転じて新たな事業の誕生を促すことにも使われるようになりました。 インキュベーションを提供する企業や組織をインキュベーターと呼びます。インキュベーターの代表例は、VC(ベンチャーキャピタル)、自治体、大学、中小機構です。 インキュベーションでは、起業・経営のアドバイス、施設の提供、技術の提供、資金や資金調達機会の提供などにより、スムーズな起業・事業創出をサポートし、さらに企業が長期的・継続的に成長する仕組みを確立することも目指します。 スタートアップがインキュベーションによる支援を受ける方法としては、VCなどが参加者を募集するインキュベーションプログラムに応募して採択されることが一般的です。 スタートアップ支援には他にもアクセラレータープログラムというものもあります。こちらは、ある程度ビジネスアイデアが固まっているスタートアップを対象したもので、スタートアップの事業成長・拡大のサポートを目的としています。VCや大企業がビジネスプランを公募し、人・モノ・資金などのリソースを提供して短期的集中的な支援を行います。

エクイティファイナンス

資金調達・キャッシュフロー 

エクイティファイナンスとは、企業が行う資金調達方法(ファイナンス)のひとつで、新株を発行し事業に必要な資金を調達することをいいます。エクイティ(株式、株主資本)を増加させる資金調達であるためこのように呼ばれています。エクイティファイナンスは、「返済義務がない」「株主が経営に関与する」「全体の株式数が増え、1株あたりの株価の希薄化が起きる」といった特徴があります。主に事業の成長を目指すタイミングで実施する資金調達方法です。 また、資金調達方法として一般的な融資・ローンによる資金調達は、デットファイナンスと呼ばれています。金融機関からの融資以外にも社債の発行など第三者からの借入による資金調達もデットファイナンスといいます。デットファイナンスには「返済義務がある」「返済期限がある」「利息が発生する」「資金調達先が豊富」といった特徴があります。

認定支援機関

支援プログラム・団体・機関 

認定支援機関とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上でにあるとして、国の認定を受けた支援機関(法人・組織・個人)のことです。正式には認定経営革新等支援機関といいます。 認定を受けた支援機関には、税理士・税理士法人・公認会計士・中小企業診断士・商工会・商工会議所・金融機関などがあり、中小企業庁が運営するWebサイト「認定経営革新等支援機関検索システム」から条件を組み合わせて検索できます。 認定支援機関は、中小企業・小規模事業者のさまざまな課題解決に向けたサポートを行います。サポートする内容は、創業・事業計画作成・経営改善・事業承継・知財戦略・マーケティング・海外展開など多岐にわたります。サポートを受けられること以外にも、事業計画の実行と進捗の報告を行うことを条件に特定の補助金が申請できるようになること、認定支援期間に事業計画の実効性を確認してもらうことで信用保証協会の保証料が減額されること、支援を受けた事業計画に基づいて事業を行う場合に海外展開のための資金調達がしやすくなることなどのメリットがあります。

特許庁

支援プログラム・団体・機関 

特許庁は産業財産権制度を管理している行政機関のひとつです。 産業財産権制度は、発明・デザイン・商標などの知的な創造物を保護・活用するための制度です。保護・活用できる権利には特許権(発明)・意匠権(デザイン)・商標権(マーク・ネーミング)・実用新案権(形・構造・組み合わせ)などがあり、これらを総称して産業財産権と呼びます。また、産業財産権と著作権を合わせて知的財産権(知財)と呼びます。 特許庁は、産業財産権の適切な付与の他に、企業の海外展開を支援するための知財インフラの提供、模倣品対策、中小企業・大学などに対する支援などを行っています。 また、特許庁はデザイン経営をさらに推進するため、2019年7月から「I-OPENプロジェクト」を開始しています。デザイン経営とはデザインの力をブランド構築やイノベーションの創出に活用する経営手法です。 「I-OPENプロジェクト」では、スタートアップ・非営利法人・個人事業主と、知財やビジネスの専門家のサポーターがチームをつくり、知財を活用した社会課題の解決ができるよう伴走支援を行っています。

カーブアウト

経営・事業戦略 

カーブアウトとは、大企業や中堅企業が自社事業の一部門を切り出し、ベンチャー企業として独立させることです。成長戦略として、あるいは不採算事業からの撤退を目的として実施します。成長戦略としては、現時点では急激な成長が見込めないものの、将来的な成長の可能性がある事業を戦略的に切り離し、外部のファンドや金融機関から資金調達を行って事業の成長を目指します。 カーブアウトのメリットには、社内に眠っている技術や特許を活用できること、それらの事業化に情熱を燃やす人材に場所を与えられることなどが挙げられます。 カーブアウトに似た言葉に、スピンオフやスピンアウトがあります。スピンオフはカーブアウトによって切り出された企業が元の企業との資本関係が継続している状態であり、社内ベンチャー制度で設立された企業などが該当します。スピンアウトはカーブアウトによって切り出された企業が元の企業との資本関係がなくなるものをいいます。

SDGsウォッシュ

経営・事業戦略 

SDGs(持続可能な開発目標)とは、2015年9月の国連サミットにおいて全会一致で採択された国際目標です。2030年までに持続可能でより良い世界をつくることを目指しており、貧困・教育・ジェンダーなど17のゴールと169のターゲットが設定されています。 SDGsは広く消費者に知られるようになったことで、SDGsに取り組んでいる企業が積極的に評価されるようになりました。そのため企業にとってSDGsへの取り組みはブランディングや付加価値のひとつにもなっているのですが、SDGsウォッシュという新たな問題も生まれています。 SDGsウォッシュとは、SDGsに取り組んでいないのに取り組んでいるように見せかけたり、実態以上に取り組んでいると見せかける行為のことです。SDGsのメリットだけを享受しようとする不正行為として自覚的に行われるものもあれば、SDGsへの理解不足から不可抗力的にSDGsウォッシュになってしまう例もあります。 SDGsウォッシュが消費者に指摘されてしまうと、その企業の信頼は大きく低下します。それは企業が意図していないSDGsウォッシュであっても同様であるため、SDGsに取り組む際には、専門知識を身に着け、誠実に実施し、情報を発信する必要があります。

私募債

資金調達・キャッシュフロー 

私募債とは、企業が発行できる債権である社債のうち、特定少数の投資家に発行するもののことです。反対に、証券会社を通じて不特定多数の投資家に対して募集する社債を公募債といいます。 社債とはお金を投資家から借りたことを証明する借用証書です。銀行融資と違う点は、投資家からお金を借りること、償還期日に一括で返済すること、貸出期間が長期で利息が固定であることです。 私募債は、公募債・銀行融資・個人間のお金の貸し借りと比べ、手軽かつコストが低いというメリットがあります。この特徴からスタートアップや中小企業の資金調達としても活用されています。 私募債にはいくつか種類があり、スタートアップの資金調達では、通常の私募債以外にも、株式を取得できる権利を付与することで私募債の価値を向上させた「新株予約権付社債」、私募債を株式に転換できる「転換社債型新株予約権付社債」もよく利用されています。