用語集

起業・スタートアップに関するキーワードをご紹介します。

エンジェル投資家

資金調達・キャッシュフロー 

創業直後のベンチャー企業に投資する個人投資家のことです。創業直後の企業は実績や信頼もなく資金調達が難しいのですが、そんな企業に投資をする天使のような存在であることから、エンジェル投資家と呼ばれています。 企業が生き残る確率は高くありませんが、大きく成長するベンチャー企業も存在します。エンジェル投資家は成長の可能性のあるベンチャー企業の株式を安い価格で取得し、将来の上場などで株価が高くなった際に売却して多くの利益を獲得します。 エンジェル投資家は引退した起業家・実業家が多く、次世代の起業家の育成や社会貢献などを目的に投資を行うことも一般的です。 エンジェル投資家を探すには、マッチングサイトを利用したり、ピッチイベントに参加したり、知り合いを通じて連絡を取ったり、SNSで直接連絡したりといった手段が考えられます。

MRR

経営・事業戦略 

MRR(Monthly Recurring Revenue)は、毎月継続的に得られる収益(売上)のことです。日本語では「月次経常収益」といいます。 クラウドサービスとして提供されるソフトウェアであるSaaSなどのサブスクリプションビジネスでは、事業の安定性や成長率を判断するために特に重要な指標のひとつです。MRRは「提供する月額料金プラン×顧客数」というシンプルな計算で求めることができます。顧客に条件を設定することで、より細かく分析することが可能です。 条件によってMRRは「New MRR」「Downgrade MRR」「Expansion MRR」「Churn MRR」の4つに分けられます。 MRRは月単位の指標ですが、年単位の指標であるARR(Annual Recurring Revenue)もあります。こちらは年間契約が多いBtoBビジネスなどで利用されています。

プロダクトアウト

起業・開業・設立 

プロダクトアウトとは、顧客のニーズよりも、企業側の強み・考えを優先して商品開発・生産・販売を行うことです。対となる言葉に、顧客・市場のニーズを応える形でプロダクトを開発する「マーケットイン」があります。 自社の技術力・強みを色濃く反映したプロダクトや、他社にないヒット商品を生み出せること、市場調査などのコストがかからないことなどのメリットがあります。 顧客のニーズを無視した開発だと誤って認識されていることもありますが、プロダクトアウトの強みを持ったプロダクトによって新しい市場の開拓や潜在ニーズを満たすことを目的としています。 プロダクトアウトの成功例としては、スマートフォンの火付け役ともなったAppleのiPhone、音楽を持ち歩くという市場を開拓したSONYのウォークマンなどがあります。

ストーリーテリング

起業・開業・設立 

ストーリーテリング(Story Telling)とは、物語(ストーリー)を語ることそのものや、物語を語る手法を意味します。もともとは文学やフィクションの領域で使われている言葉・考え方でしたが、2010年頃からアメリカにおいてマーケティングで応用され始めました。 物語は、より強いイメージの喚起、共感、記憶定着において強い力を発揮することがわかっています。 ビジネスでは、プレゼンテーションにおいて強く印象付けるため、プロダクトのPRサイト・動画において顧客により深く訴求するためなど、相手に何かを伝える際に利用されます。 例えば、マーケティングにおいては、プロダクトの特徴や機能を説明するのではなく、プロダクトを利用することでユーザーの生活がどのように豊かになるのか、といったことを語ります。

ピッチ

起業・開業・設立 

ビジネスにおけるピッチとは、短時間で不特定多数の相手(投資家など)に、わかりやすい言葉で何らかの提案をすることを指します。似たような言葉にプレゼンテーションがありますが、プレゼンテーションは特定の顧客や身内などが対象で、ピッチは初めて会う相手や不特定多数の相手が対象であることが違いです。 ピッチの発祥はIT業界の中心地であるシリコンバレーです。シリコンバレーでは日々新たなスタートアップが生まれています。スタートアップの起業家は、事業の立ち上げや成長のために投資家の心をつかむ必要があり、ピッチによってビジネスアイデアを伝えています。 ピッチには、エレベーターに乗っている間の15~30秒といった短時間で伝えるエレベーターピッチというものがあります。内容をコンパクトにまとめる必要があるため、自身の事業を深く理解することにつながるといわれています。

ESG投資

経営・事業戦略 

ESG投資とは、財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の要素も考慮した新たな投資のトレンドです。社会的な課題の解決を目指す企業こそが中長期的に成長するという考え方に基づいています。 2006年に国連のアナン事務総長が、投資の意思決定にESGを取り入れる「責任投資原則(PRI)」を提唱したことがきっかけでESG投資が認識されるようになりました。その後、2008年のリーマンショックもあり、短期的な利益を追求する経営・投資が批判されたことで、世界中の投資会社・投資家に注目されました。 さらに2015年9月の国連によるSDGs(持続可能な開発目標)の採択もあり、ESG投資は大きなトレンドとなっています。ESGに消極的な企業は投資対象から外れてしまうこともあり、企業はESGに積極的に取り組むようになっています。

新株予約権

資金調達・キャッシュフロー 

株式会社が投資家・従業員・他企業など第三者に対して付与する権利です。第三者はその権利を行使することで一定期間内にあらかじめ決められた金額で株式を取得できます。つまり、将来株価が上がった際に以前の株価で買えるという権利です。もし株価が下がっていれば権利を放棄できるため、新株予約権を付与された第三者はほとんどリスクがありません。新株予約権は、資金調達、社員・従業員へのインセンティブ(ストックオプション)、敵対的買収の対策などで利用されます。 新株予約権を利用した資金調達は、第三者が権利を行使した段階となるため、長期的なものになってしまいます。スピーディな資金調達を実施するため、新株予約権の引き受けを有償にし、そのオプション料を得る方法や、新株予約権付社債として発行し、社債の価値を上げることで社債による資金調達を行う方法があります。

デューデリジェンス

経営・事業戦略 

M&A(企業の買収と合併)などの際、買収対象の企業の財務などの情報を入手し、企業価値やリスクなどを詳しく調査します。これをデューデリジェンスといいます。 一般的なM&Aのプロセスでは、買収対象企業が自社の情報を開示し、買収者はその情報を基に暫定的な買取価格を算定し、基本合意書を締結します。その後デューデリジェンスを行い、買取価格が適切であるかを判断し、M&Aの最終的な意思決定を下します。 M&Aをイグジット戦略として捉えているスタートアップなどにとっては、デューデリジェンスは乗り越える必要がある難所です。もし紛争や訴訟などの大きなリスクがあると判明した場合は、M&Aが白紙になることもあります。そのためM&Aを目指すスタートアップはしっかりとした経営基盤・内部組織を構築しておく必要があります。

M&A

経営・事業戦略 

M&Aとは、合併と買収(Mergers and Acquisitions)の略語で、資本の移動を伴う企業の合併と買収を意味します。国内ではバブル崩壊後、力があるものの経営不振に陥る企業が増加しました。海外企業はM&Aという手法でこの企業を次々と買収していったことから、M&Aには身売りというイメージがついてしまいました。しかし近年は国内企業同士のM&Aが増えイメージが向上し、中小企業においても現実的な経営戦略のひとつとして定着してきています。例えば、M&Aによる事業承継がそのひとつです。中小企業では後継者問題が深刻化していますが、M&Aでは譲渡先企業・経営者の合意があれば社内風土の変更や従業員の解雇を伴わずに、会社を引き継ぐことができます。国・自治体は力のある中小企業が後継者不足を理由に廃業してしまうことを問題視しており、自治体などによるM&A支援も広く展開されるようになってきています。

BOPビジネス

経営・事業戦略 

世界の所得別の人口構成をグラフ化すると、下から低所得者層・中間層・富裕層のピラミッド構造になります。この一番下の低所得者層をBase of the Pyramid(BOP)と呼びます。 BOPの定義は様々ですが、一般的には、購買力平価(PPP)ベースで年間所得が3,000ドル未満の層のことを指します。この層は世界人口の約7割、つまり約40億人存在するといわれています。 BOP層は生活コストにおいて不利益を被っています。例えば、低所得が理由で交通の便が悪い場所に住まざるを得ず買い物のために交通費がかかることなどが挙げられます。これをBOPペナルティといいます。 こうしたBOP層の不便・不利益を解消し、有益なプロダクト・サービスを提供するビジネスをBOPビジネスといいます。SDGsの推進だけでなく、将来的な中間所得層であることや競合がまだ少ないことから、新たなマーケットとしても注目が高まっています。 BOPビジネスの例としては、ユニリーバが挙げられます。ユニリーバはインドの貧しい農村部を中心に、使い切り石鹸などのBOP層でも購入できる日用品を販売しました。さらに、現地の女性を販売員として雇用することによる雇用の創出や、衛生関連の教育セミナーを開催しました。これによりユニリーバ独自の流通網を獲得しています。

法人登記

起業・開業・設立 

法人登記とは、会社を設立する際に、会社の重要な情報を法務局に登録し、一般に開示するための制度のことです。法人登記は法律によって義務づけられているため、会社設立の際は必ず行わなくてはなりません。法人登記が完了すると即座に会社が設立され、法人番号という固有の番号が発行され、専用のサイトに掲載されます。 また、重要な情報とは、法人の商号(会社名)、所在地、代表者の氏名、資本金などですが、登記後に所在地の移転や代表者の変更などがあった場合は、変更の登記をしなければなりません。こちらも法人登記と呼ぶため、設立のための法人登記を法人設立登記と呼ぶことがあります。 会社を設立せず個人でビジネスを営んでいる個人事業主もいますが、利益が大きくなってくると、最大45%の所得税がかかってきます。そのため、大きくなってきた個人事業主は、税率の低い法人へと変更する「法人化」を行います。

バックキャスティング

経営・事業戦略 

バックキャスティング(Backcasting)とは思考法のひとつです。未来のあるべき姿を描き、その未来に至るための道筋や施策を考える思考法のことです。逆算思考と呼ばれることもあります。バックキャスティングには、現状にとらわれないアイデアの創出や、選択肢が広がること、長期的な目標を立てられることなどのメリットがあります。 バックキャスティングによって示された目標の有名な例が「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」です。 バックキャスティングの反対となる思考法に、フォアキャスティング(Forecasting)があります。フォアキャスティングは現在を起点として、抱えている課題にどのような改善を行えるのかを考え、それを積み上げていき地道に改善をくり返していく思考法のことです。現状の問題点の改善や、失敗のリスクが低いことなどのメリットがあります。