レポート

図解の大御所・ロジックモデルにできること・できないこと

はじめまして。日本財団のしまだです。
気の向くまま、時々こちらで発信していくので、チラ見していただければと思います。

さてさて、一発目の話題は、ロジックモデルです。
ロジックモデルとは、一言でいえば、「その事業がどうやって成果を生み出すのか」を説明した図です。基本的な作成方法は「ロジックモデル作成ガイド」によくまとまっているので、ここは思い切って割愛しますね。

ロジックモデル、意外と使いどころは多いのですが、どうもとっつきづらい。
今回は、作成ガイドにはあまり書いていないポイントをお伝えできればと思います。

ロジックモデルにできること

ロジックモデルを作成する目的は何でしょうか。これは意外に難しい問いなのです。ロジックモデルをつくったからといって資金調達に直結するとは限りません。収益を上げられるかどうかの方が気になる投資家が多いかもしれません。そんななか、時間と労力をかけてロジックモデルをつくるのはなぜか。

二つあると思うんです。

①支援者の獲得。

みなさんの活動がどうやって社会的インパクトを生み出すのかに関心を寄せている人々がいます。たとえば、インパクト投資家。まだ数は多くないかもしれませんが、経済性だけでなく、社会的インパクトも評価軸にしているので、ロジックモデルが役に立つでしょう。また、行政などへの説明にも、ロジックモデルは一役買います。その活動が地域にどのようないい影響を及ぼすのか、しっかり示されていれば協働してくれるかもしれません。

実は、私たち日本財団のような中間支援団体にとっても、ロジックモデルは重要なのです。たとえば、「子どもに対して朝ごはんを食べる習慣をつける→子どもの貧困を解消する」という事業の相談を受けたとします。「その仮説って本当なのか?」と思うことが、ぶっちゃけあるわけです。ロジックモデルがあると、活動が生むインパクトの整合性をチェックしながら、サクサクと情報を整理できるということです。

②チームで目的と達成方法の共有。

スタッフの数が必ずしも多くないスタートアップやNPO。日々の書類業務や調整に忙殺されていると、この仕事は何のためにやっているんだっけ?となりがち。そんな時に、「ああ、これは最終的にここにつながっているんだった」と立ち戻ることができる。チームで目的が共有できていることは、モチベーションを高める上でも大事なことだと思います。

チームでつくるコツ

ロジックモデルの作成には、多角的な視点が不可欠。もれなくダブりなく様々な仮説を出し切ることが説得力のあるロジックモデルにつながります。なので、やることは意外にシンプル。

【必要なもの】
 ・複数のメンバー
 ・本音を言い合える関係
 ・付箋
 ・筆記用具
 ・時間

そして、下記に沿ってみんなで意見を出し合うのです。
「誰の、どんな問題を解決したいんだっけ?」
「そのために達成すべき目標って何だっけ?」
「その目標を達成するため必要な手段は何だっけ?」

ロジックモデルの構造

付箋に書き出しまくって、ペタペタと張って、矢印でつなげてみる。矢印は仮説を意味しているので、それぞれに「本当にそうか?」とメンバー同士で問いかけるといいですね。

そうして完成したロジックモデル。これを半年~1年に1回くらいのペースで社内で振り返ってみる。これが案外大事でしょうね。改めて、ゼロベースで「このロジック、本当にそうか?」と議論できれば、いいチームなのではないでしょうか。

関係者を洗い出す

最後にもう一つ。「誰に」対する成果なのか、を明らかにするのは重要です。社会課題に取り組むプロジェクトは登場人物が多くなりがち。事業の実施者、協力者、複数の受益者が入り乱れてちょっとカオティック、なんてこともあります。だから、関係者を洗いだして整理することは重要です(こちらも参照)。

ちなみに、受益者は複数であることも考えられます。たとえば、就労支援の事業であれば、本人・家族・行政などの受益者が想定されます。それをロジックモデルに落とし込むこともできます(就労支援のロジックモデル例が参考になります)。

ただ、これは感覚もあるんですが、事業のメインターゲット(=主たる受益者)を絞っておくことは重要だと思います。その上で、他の対象者にどのように事業の成果が広がっていくのかを明らかにできるといいです。

ロジックモデルの苦手なこと

さて、そんな便利なロジックモデル。でも、苦手なことがあると思っています。

まず、事業を知らない人にとってみると、全体像を把握するまでに時間がかかる。直感的にわかる図を作りたい人にとっては、ロジックモデルは向かないかもしれません。それから、コレクティブインパクトが十分に表現しにくい。一方通行の矢印が基本構造のため、関係者と共に取り組んでいる様子が浮かびにくい側面があります。

ということで、日本財団では、ロジックモデルとは別の形の新たな図解開発に取り組んでいます。乞うご期待。ロジックモデルに関する皆さまからのご質問やご相談もお待ちしております。

お問い合わせはこちらから↓
日本財団スタートアップ支援プロジェクト事務局:startup@ps.nippon-foundation.or.jp

ロジックモデル作成に役立つリンク集

ロジックモデルのフォーマットダウンロード

ロジックモデル作成ガイド

ロジックモデル解説(社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ)
 解説だけでなく、ロジックモデルの例もたくさんあります。

分野ごとのツールセット
 分野ごとに、社会的インパクトの評価に関するツールや指標がまとまっています。

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