レポート

【SCM5期デモデイ】切磋琢磨しながら成長した社会起業家たちの成果は?

ソーシャルチェンジメーカーズ(以下SCM)第5期デモデイ「SCM#5 LIVE PITCH NIGHT」が、2022年2月25日に開催された。

2021年9月〜12月の4ヵ月間、計14回のワークショップを通して学んできた起業家たちが、ブラッシュアップしたビジネスプランを発表した。起業家たちはSCMを通して何を得ることができたのか。

磨き上げられたストーリーテリングを披露したデモデイ

SCMを提供するImpacTech Japanのファラ・タライエさん

シェアオフィス City Lab Tokyo にて行われた「SCM#5 LIVE PITCH NIGHT」は、オンラインでの同時生配信も実施され、会場・オンラインあわせて100名以上ものオーディエンスが参加した。

第5期12社がそれぞれ6分間のピッチを実施。最後にオーディエンスの投票で票数が多かった1位〜4位に賞が渡された。

1.株式会社 An-Nahal
2.株式会社アラネア
3.ELLA
4.株式会社 FireTech
5.フューチャークエスト株式会社
6.ITD-GBS Tokyo
7.株式会社ロマーシュ
8.LOOVIC株式会社
9.Match Hat
10.株式会社MIRAIing
11.Noetic Digital
12.PJP Eye株式会社

【第1位】 株式会社アラネア

栄えある第1位を獲得したのは、株式会社アラネアだ。独自の発酵技術(アラネア菌)を用い、本来捨てられるはずであった食料残渣や廃棄物を、タンパク質を含むスーパーフードに変化させる技術を提供する。

じつは、CEOの宮良アレキサンダー真平さんがSCMへの参加を申し込んだのは今回で2度目。1度目は「何も決まっていなかった」というが、2度目にして参加を認められた今回も、まだ課題は山積みであったという。

「進みたい方向性は見えていたけれど、実際にどのように実現させていくのか、SCM参加前にはまだはっきりと見えていなかったんです。でも今回参加したことで、ビジネス戦略やストーリーテリング、デザインやプロダクト開発など、いろいろなものを形にしていくことができました。SCMの先輩やメンターとディスカッションするなかで気づくことも多かったですね」(アレキサンダーさん)

「参加前にはビジネスプランが具体化できていませんでしたが、SCMを通してMVP(Minimum Viable Productの略称。必要最小限の機能のみ搭載された商品のプロトタイプ)も完成し、企業と組んでビジネスを推進するまでに成長しました。切磋琢磨できる環境と、メンターや周囲とのディスカッションで得た気づきが彼らを大きく成長させたと思います」(ファラ)

アレキサンダーさんはこれから、具体的になった計画をもとに、プロダクト開発をさらにスピードアップさせていくという。

【第2位】 Noetic Digital

Noetic Digital(ノエティック・デジタル)は、クラウドソーシング上のアンケート結果を分析するデジタル技術と、Ask(質問する)、Analyze(分析する)、Iterate(繰り返す)の3ステップを踏む独自のアプローチから、質の高いマーケティングインサイトを導き出すリサーチプロダクトを提供している。CEOのジョージ・リードさんは「調査においては『正しい質問』をすることが重要です。『デザイン思考』などのアプローチをマーケティングリサーチに活用することで、多大な時間とコストを要する従来型のリサーチアプローチよりも深い顧客理解を得られます」と述べる。

「将来、確実にポジティブな社会的インパクトをもたらすであろう他のスタートアップと一緒に学べたこの期間は、私のキャリアでも最も実りあるものでした。とくに我々のビジネスをどのように伝えれば伝わりやすいのか、ストーリーテリングを学ぶことでとてもクリアになりました」(ジョージさん)

「ジョージの成長には驚きました。率直に言うと、SCMの申込時の選考で見せてくれたジョージのプレゼンは、技術の説明に偏っていて、非常にわかりづらいものでした。デモデイで2位を獲得したのは、ストーリーテリングを着実に自分のものにしようとしたジョージの努力の賜物でしょう」(ファラ)

すでに日本の大手企業からも引き合いがきていると言うNoetic Digital。日本に拠点を置きつつ、より積極的な海外展開を視野に入れているということだ。

【第3位】 株式会社FireTech

3位は防災テック領域のプロダクトを開発する株式会社FireTech。代表の渡邊玲央さんは、東京消防庁での約14年間の勤務や、スタートアップでのITエンジニアとしての経験を生かし、防火対象物点検を行う際に必要な報告書を、スマートフォンやタブレット上のアプリから簡単に作成できる「防点丸」を開発。不動産オーナーや設備会社に提供する。

社会的インパクトを追求するSCMの理念と、英語でのプログラム受講に魅力を感じて申し込んだ渡邊さんだが、SCMでは期待以上の成果を得られたそうだ。

「ハードシングスを実体験で経験されてきた起業家の先輩方が講義やメンターになっていただいたので、すごく勉強になりました。これからチームを作っていくにあたり、気をつけるべきポイントなども丁寧に教えていただき、感謝しています。ネットワーキングしていただいた方と話すなかで、よりニーズが大きいターゲットユーザーが誰なのかわかり、我々が提供する『防点丸』の開発方針を改善できた点も非常によかったです」(渡邊さん)

「渡邊さんは最初、一人でプロダクトを開発されていました。チームビルディングのやり方に不安があったみたいなんですね。SCMを通して学んだことで、現在ではいいチームとともに開発できているようです。社会起業家としてのマインドセットの面で、すごく成長されたと思います」(ファラ)

ボクサーとして全日本3位の受賞経験もある渡邊さんは、「SCMを経て不動産オーナーさんが我々のメインターゲットだとわかったので、今は脇目もふらず“ラッシュをかけている”最中です」と茶目っ気たっぷりに語った。

【第4位】 LOOVIC株式会社

LOOVIC株式会社CEOの山中享さんは、自身の子どもが抱える視空間認知障害の課題を解決したいと言う思いから、地図を意識しないで移動できるガイドヘルプテック「LOOVIC」を提供する。首からかけて利用できるので、いちいちアプリを見る必要がなく、触覚と音声によって、ユーザーは道に迷うことなく移動できるように導かれる。

早い段階での海外展開を視野に入れているため、海外でのビジネス経験が豊富なメンターから海外展開の仕方について学べることを期待してSCMに参加したとのこと。

「海外でのビジネス展開については講義やディスカッションを通して大いに学べました。得られたものは期待以上でしたね。社会課題の捉え方についても、日本財団が開発している『ソーシャルモデル』という図解作成ワークショップなどを通じてより理解が深まりました」(山中さん)

「LOOVICは5期のなかでも一番成長したと感じました。SCM参加当初のプロダクトは現在とは全く違う形でしたが、プログラムを通じて課題をブラッシュアップし、現在の首にかける形のものに落ち着いたようです」(ファラ)

今後は海外の投資家からの投資受け入れも視野に入れつつ、海外で事業をスケールさせていく予定だという。

社会的インパクトをもたらすビジネスをこれからも応援していきます

SCMを運営するImpacTech Japan のファラ・タライエは、「5期は、メンバー同士でよく食事に行っていました。非常に仲がよくて、スタートアップ同士の交流から気づいたことも多かったようです」と、第5期の総評を述べた。

「ソーシャルイノベーションやサステナビリティに必要なものは何か。それはチームワークと協働の精神です。また、SCMに参加するようなイノベーションに強い思いがあるスタートアップは、『あれもこれもやりたい』となりがちです。しかしそれだとうまくいかない場合が多い。スタートアップとしてやりたいこと、すべきことをしっかり絞る。そして、さまざまな人とのチームワークや協働を通して、コミュニティとともに社会の変化を生み出していく。SCM5期に参加するメンバーには、ソーシャルスタートアップとしてのマインドセットを持ってもらえるよう支援しましたので、これからも大切にしてほしいです」(ファラ)

成長した起業家たちを「応援したい」という方は、ぜひ各社のホームページから問い合わせいただきたい。より大きな社会的インパクトを生み出すため、多くの方々にご支援いただければ幸いだ。


株式会社アラネア

アラネア菌を用いて食品残渣をスーパーフードに変える

Noetic Digital

独自の技術とアプローチで社会課題を理解し解決するための本質的なインサイトを提供

株式会社FireTech

iPhone・iPadで消防点検!「防点丸」

LOOVIC株式会社

首からかける迷う人のためのガイドヘルプテック「LOOVIC」

SNSシェア

Facebook Twitter LinkedIn