用語集

起業・スタートアップに関するキーワードをご紹介します。

スタートアップビザ

支援プログラム・団体・機関 

スタートアップビザとは、自国で起業する外国人に対し、一時的な在留許可を認めるビザのことです。欧州諸国を中心に、自国の人材だけでは大きな経済発展が望めないという課題が顕在化しました。そこで各国において、イノベーションや雇用の創出を目的に、優秀の人材を誘致するための施策としてスタートアップビザの導入が広がっています。英国やブラジルなど20カ国以上で導入されています。 多くのスタートアップビザでは、既存の分野での起業は対象外で、革新的なプロダクトやサービスを計画している起業家が対象です。 さらに、ただ滞留許可を出すだけでなく、資金や活動場所(コワーキングスペースなど)の提供などにより、企業の成長を支援する取り組みも行っています。 日本では、経済産業省の定めに沿って地方自治体が実施する「外国人起業活動促進事業」と、内閣府が実施する「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」の2つがスタートアップビザに該当します。 「外国人起業活動促進事業」は、地方自治体が管理・支援する外国人起業家に対し、最長1年間の入国・在留を認める制度です。2022年9月時点で、福岡市、愛知県、岐阜県、神戸市、大阪市、三重県、北海道、仙台市、横浜市、茨城県、大分県、京都府、東京都渋谷区、浜松市が経済産業省に認定され、この制度を実施しています。 「国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業」は、国家戦略特区(秋田県仙北市、宮城県仙台市、東京都、神奈川県、千葉県千葉市・成田市、新潟県新潟市、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、兵庫県養父市、広島県、愛媛県今治市、福岡県福岡市・北九州市、沖縄県)が特例的に認められた制度です。通常、在留資格である「経営・管理」の認定を受けるには、申請時に事務所の開設と、常時職員の2人以上雇用もしくは資本金または出資総額が500万円以上などの要件を満たす必要がありますが、この制度では要件を満たしていなくても、対象の特区に創業活動計画書などを提出し、要件を満たす見込みがあることが確認されると、6カ月の「経営・管理」の在留資格が認められます。

セオリーオブチェンジ

経営・事業戦略 

セオリーオブチェンジ(ToC:Theory of Change)とは、NPO法人などの社会課題の解決を目指す団体などが、事業がどう社会の変革に役立つのかについて、課題の構造・原因と、解決するための変化の理論・法則を図式化したものです。 セオリーオブチェンジは、事業の計画・設計、実行、評価のいずれの段階でも活用できます。事業の計画段階では、メンバーで集まり対話しながらセオリーオブチェンジを作成することで、目標や目標を達成するための成果などを整理し明確にすることができます。実行段階では、事業の進捗管理として利用できます。評価段階では、成果の計測と同時にセオリーオブチェンジを作成することで、対外的に事業の内容と成果の因果関係を示すことができます。 社会課題の解決を目指す事業では、セオリーオブチェンジと並び、事業・組織が目指す変化・効果の実現に向けたプロセスを論理的に整理するためのフレームワークであるロジックモデルもよく利用されています。

シード期

経営・事業戦略 

ベンチャー企業は、成長段階によって「シード期」「アーリー期」「ミドル期」「レイター期」の4つのステージに分類されます。 シード期は、起業前あるいは起業直後でまだ本格的な事業を展開していない時期、つまり成長する前の種(シード)の時期のことです。プロダクト・サービスのアイデア・仕組みを考えたり、事業を展開するための準備を進めたりしている段階であり、今後の土台となる重要な時期といわれています。 アーリー期は、立ち上げた事業が軌道に乗るまでの期間のことです。事業を認知、拡大させるためにさまざまなコストがかかってきますが、まだビジネスが軌道に乗っていないため、赤字になるケースがほとんどです。 ミドル期は、プロダクト・サービスが市場で認知されはじめ、ビジネスが軌道に乗りはじめた段階です。組織の規模拡大やマーケティングなどに注力し、今後長期的に経営が続けられるような戦略を実施します。レイター期は、すでに一般的に認知され、持続的な拡大が見込める段階です。事業も黒字化しているケースが多く、上場を目指したり、新たな事業を立ち上げたりします。

産学官連携

経営・事業戦略 

産学官連携とは、民間企業(産)、大学・研究機関(学)、行政(官)の3社により、共同研究や民間企業と大学を行政を結ぶといった連携を行うことです。大学や研究機関が持つ研究成果や技術を、新たな製品の開発や地域の課題解決などに活用するといった取り組みが目立ちます。 産学官連携は主に文部科学省が推進している施策であり、「官民イノベーションプログラム」や「スタートアップ・エコシステム拠点都市」といった目玉となる取り組みも行われています。 官民イノベーションプログラムは、国立大学と民間企業の共同研究開発の推進や大学発ベンチャーの創出を目的とした事業です。東北・東京・京都・大阪の4つの国立大学に国が1,000億円を出資し、各大学ごとにファンドを組成し、大学発ベンチャーの出資・支援を行っています。 スタートアップ・エコシステム拠点都市は、自治体・大学・民間組織を構成員としたコンソーシアムを国が支援することで、スタートアップの創出・成長、そしてユニコーン企業の輩出を目指す事業です。

新創業融資制度

資金調達・キャッシュフロー 

新創業融資制度とは、政府系金融機関である日本政策金融公庫が取り扱う、新規創業者を対象とした融資制度です。新規創業者、もしくは、事業開始後税務申告を2期終えていない者であれば、最大3,000万円を借りることが可能です。 一般的に法人が融資を受ける際には、代表者(経営者)が連帯保証人になる必要がありますが、新創業融資制度は無担保・無保証人で利用できるため、企業が倒産した場合であっても代表者に責任が及ぶことはありません。 融資にあたっては審査が行われますが、具体的な審査内容や基準は公開されていません。一般的には創業計画書をしっかりと作成することが重要だといわれています。創業計画書には、創業の動機、事業の経験、取り扱う商品・サービス、販売先・仕入先、必要な資金とその調達方法、事業の見通しを記載します。

資本性劣後ローン

資金調達・キャッシュフロー 

資本性劣後ローンとは、通常のローンは負債としてみなされるのに対し、自己資本としてみなされるローンのことです。劣後ローンとは、会社が倒産した場合に、回収の優先度が他の債務より劣る、つまり優先度が低いものとして取り扱われるローンのことです。劣後ローンは回収できないリスクが非常に高い資金であるため、資本に近い資金として「資本性」「劣後」という名称がつきました。貸し倒れリスクが高いため、通常の融資よりも金利が高く設定されています。 資本性劣後ローンの特徴は、「期限まで返済が不要で、金利のみの支払い」「業績に連動して金利が変動する」「期限一括返済」などです。 コロナ禍では日本政策金融公庫と商工組合中央金庫(商工中金)によって、一時的に財務状態が悪化した中小企業等に対して資本性劣後ローンによる金融支援が行われました。

私募債

資金調達・キャッシュフロー 

私募債とは、企業が発行できる債権である社債のうち、特定少数の投資家に発行するもののことです。反対に、証券会社を通じて不特定多数の投資家に対して募集する社債を公募債といいます。 社債とはお金を投資家から借りたことを証明する借用証書です。銀行融資と違う点は、投資家からお金を借りること、償還期日に一括で返済すること、貸出期間が長期で利息が固定であることです。 私募債は、公募債・銀行融資・個人間のお金の貸し借りと比べ、手軽かつコストが低いというメリットがあります。この特徴からスタートアップや中小企業の資金調達としても活用されています。 私募債にはいくつか種類があり、スタートアップの資金調達では、通常の私募債以外にも、株式を取得できる権利を付与することで私募債の価値を向上させた「新株予約権付社債」、私募債を株式に転換できる「転換社債型新株予約権付社債」もよく利用されています。

ストーリーテリング

起業・開業・設立 

ストーリーテリング(Story Telling)とは、物語(ストーリー)を語ることそのものや、物語を語る手法を意味します。もともとは文学やフィクションの領域で使われている言葉・考え方でしたが、2010年頃からアメリカにおいてマーケティングで応用され始めました。 物語は、より強いイメージの喚起、共感、記憶定着において強い力を発揮することがわかっています。 ビジネスでは、プレゼンテーションにおいて強く印象付けるため、プロダクトのPRサイト・動画において顧客により深く訴求するためなど、相手に何かを伝える際に利用されます。 例えば、マーケティングにおいては、プロダクトの特徴や機能を説明するのではなく、プロダクトを利用することでユーザーの生活がどのように豊かになるのか、といったことを語ります。

新株予約権

資金調達・キャッシュフロー 

株式会社が投資家・従業員・他企業など第三者に対して付与する権利です。第三者はその権利を行使することで一定期間内にあらかじめ決められた金額で株式を取得できます。つまり、将来株価が上がった際に以前の株価で買えるという権利です。もし株価が下がっていれば権利を放棄できるため、新株予約権を付与された第三者はほとんどリスクがありません。新株予約権は、資金調達、社員・従業員へのインセンティブ(ストックオプション)、敵対的買収の対策などで利用されます。 新株予約権を利用した資金調達は、第三者が権利を行使した段階となるため、長期的なものになってしまいます。スピーディな資金調達を実施するため、新株予約権の引き受けを有償にし、そのオプション料を得る方法や、新株予約権付社債として発行し、社債の価値を上げることで社債による資金調達を行う方法があります。

信用保証協会

資金調達・キャッシュフロー 

信用保証協会とは、信用保証協会法に基づいて設置されている公的機関です。中小企業が金融機関から融資を受ける時に、保証人となることで借入を支援することを目的としています。 中小企業はまだ実績がなかったり、経営リスクが大きいといった信用面での課題があるため、融資を断られたり、希望した金額が借りられないことがあります。そのため信用の足りない中小企業は、信用保証協会の保証を受けて融資を申し込みます。 信用保証協会の保証の利用方法には2種類あります。 1つは信用保証協会に直接融資を申し込む方法です。信用保証協会の審査が通った場合には、協会に金融機関を紹介してもらえます。 もう1つは金融機関に融資を申し込む際に信用保証協会の保証に申し込む方法です。ほとんどの企業は金融機関経由で保証を申し込んでいます。 審査はほとんどが書類の内容で判断されます。提出する書類で最も重要なのが、保証申込書の「事業概要欄」と添付書類である「事業計画書」「経営改善計画書」です。審査では今後返済できる能力があるかどうかが重視されるため、会社の状態や事業の成長性、資金の使い道などを明確に記載することが重要です。

信用組合

資金調達・キャッシュフロー 

信用組合は、中小・小規模事業者や生活者のための金融を担う、地域密着型の金融機関(コミュニティバンク)です。正式には信用協同組合といいます。 利用者である中小・小規模事業者や生活者が組合員となり、相互扶助によって預金・融資などの金融サービスを提供することを特徴としています。 また、同業種の人たちで構成される信用組合や、同じ職場に勤務する人を組合員とする信用組合もあります。 信用組合と同様に、相互扶助を目的とした地域密着型金融機関として信用金庫があります。 信用組合と信用金庫の違いは、根拠法と会員(組合員)資格の違いです。信用金庫のほうがより資本金の多い企業も会員として受け入れています。 また、預金については信用金庫は制限がなく誰でも受け入れていますが、信用組合は原則的に組合員のみを対象としています。

スピンオフ

経営・事業戦略 

ビジネスにおけるスピンオフとは、企業・組織から一部の事業部門を切り離し、独立させることを意味します。通常、事業部門を切り離すと、切り離したぶんの事業部門の価値だけ株価が下がり、株主に損失が発生する可能性があります。しかし、スピンオフで設立した子会社の株式を親会社の株主にすべて分配するため、株主に損失が発生することはありません。 スピンオフは、ベンチャー企業が大きくなった組織をグループ企業として再編する場合や、大企業がリスクの高い新たな事業に取り組む場合に利用されています。 また、親会社との関係が薄い、もしくは関係がない別会社を設立することをスピンアウトと呼んで区別しています。 スピンオフやスピンアウトと似た意味の言葉にカーブアウトがあります。スピンオフと同じく企業・組織から一部の事業部門を切り離し独立させることを指しますが、外部のファンドや金融機関からの資金調達を伴う点がスピンオフと異なります。